ぱぷりかの機械系技術ノート

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TWELITEとArduinoを使った測定データの収集について2 (ハードウェア構成)

前回の続きとして,TWELITEとArduinoを使った測定データの収集について,具体的なシステムを考えてみたい.

例として,下図のように温度を測定するシステムを取り上げてみる.

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温度データ収集システム

この例では,中継デバイスを使用しない単純な構成にしてある.温度センサーLM61BIZの出力をArduinoのアナログ入力ピンで取り込み,結果をTWELITEでWindows PCに転送する.

エンドデバイスの回路図は次のようになる.TWELITEの動作電圧は2V-3.6Vなので,それに合わせて3.3V仕様のArduino Pro Miniを使用している.LEDは外部から送信タイミングを確認するために使用する.

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回路図

次回はTWELITEとArduinoの間のやり取りについて検討する.

TWELITEとArduinoを使った測定データの収集について1

ある地点で測定されたデータを,離れた別の場所で収集することを考える. その際の通信手段として,無数の方法が考えられるが,測定点から受信場所までの距離や通信するデータ量によっては, IEEE802.15.4(ZigBee)が方法の1つとなりえる.

このIEEE802.15.4という規格に準拠したデバイスとしてTWELITE (モノワイヤレス製)がある. TWELITEは無線機能を内蔵したマイコンで,アナログ入力,デジタル入出力,シリアル入出力の端子を備えている.

用途に応じて数種類のプログラム(TWELITE APPS)が,メーカーによって準備されており,これをTWELITEに書き込むことで, 目的に合わせてTWELITEの機能を変更することができる.また,C言語で独自のプログラムを作ることもできる.

したがって,下図のように,TWELITEと各種センサーを直接接続することで, 測定されたデータをデータ収集側(PC等)へ送信することも不可能ではない.

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TWELITEを使ったデータ収集

しかしながら,組み込みのプロフェッショナルであればいざしらず,そうでない者がこのようなシステムを構築するということは 現実的とは言えない.その理由として,以下のことが挙げられる.

  • メーカー製のプログラムを使用する場合,TWELITEにI2C接続およびSPI接続できるセンサーが限られる(少ない)こと
  • メーカー製のプログラムを使用する場合,木構造のネットワークを形成しようとすると,通信経路の制御が難しいこと
  • メーカー製のプログラムを使用せず,独自にプログラムを作成すれば上記問題は解決するが, その学習コストがかなり高いこと

そのため,下図の通り,TWELITEは通信装置としてのみ使用し,センサーとのやりとりや,通信経路の選択をArduinoに任せるという方式が 組み込みプログラムの専門家以外にも扱いやすく,柔軟性に富んだ方法と思われる.

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TWELITEとArduinoを使ったデータ収集

次回以降で具体的なハードウェアの構成とソフトウェアの実装について考えてみたい.

『応用力学<静力学編><動力学編>』を読んで

読んで良かったと感じた本の1つがティモシェンコ/ヤング著『応用力学』(好学社,1966年)だ.静力学編と動力学編があるがいずれもすばらしい.

●良かった点 説明が大変丁寧.力学の基礎部分(大学1年でやる部分)に関して,今までなんとなくわかった気になっていたようなことを,正しく理解できる.

●残念だった点 動力学編では質量の単位がm/gになっているので注意が必要.ジャイロ効果について記載があるが,導出についてもう少し詳しく書いてあれば良いと感じた.

●感想 現在本屋に並んでいる本で,クレモナ線図について丁寧に説明されているのは,本書くらいではないかと思う.クレモナ線図は静定のものにしか適用できず,数値計算が一般的になってきた現在ではあまり実用的ではないかもしれないが,原理的な考えの勉強としては大変興味深い.

また,任意の点にかかる力は,別の点にかかる同じ大きさの力と偶力で置き換えることができるとの記載があった.言われてみればその通りなのだが,今まで明文化して考えたことがなく,頭が柔軟になったような気がした.

『防振基礎の設計法』を読んで

大築志夫著『防振基礎の設計法』(オーム社,1959年)を読んだ.

良かった点

とにかく具体例が豊富なのが良い.

残念だった点

振動する側(振動源)と振動を受ける側があったとして,振動源の支持方式によって,振動を受ける側の振幅がどのようになるかということはこの本でよくわかった.ただ,振動源自体が支持方式によってどのような影響を受けるのかについてはわからなかった.たとえば,弾性支持にすると機械の寿命が延びるというような結果がわかればより有用だと思った.

感想

この本のように,実例を詳しく述べた本は,最近あまりないと思う.実際に実務をする人と本を書く人が別々になっているためだろうか.守秘義務等の関係で仕方ないところもあるが,このような本がもう少し増えれば良いと思う.

『構造計算書で学ぶ鉄骨構造』を読んで

上野嘉久著『構造計算書で学ぶ鉄骨構造』(学芸出版社,2009年)を読んだ.

良かった点

  • 構造計算書とその説明が並行して進むため,独学で学習できる.
  • 構造計算書の対象物として,事務所と休憩所の2種類が挙げられている.これらがそれぞれラーメン構造とブレース構造になっており,それぞれの構造について,無駄なく学ぶことができる.
  • D値法についてはあまり解説している書物がないが,本書には比較的詳しく述べられている.

残念だった点

書籍のあまり性質上やむを得ないことであるが,理論的なことまでは踏み込んでいない.上野嘉久著『実務から見た鉄骨構造設計』や松本慎也著『よくわかる構造力学の基本』などを併読する必要があると思われる.

○感想 私は大学で機械工学を専攻したが,その間,構造力学についてあまり詳しく学ぶ機会がなかった.具体的に言うと,建築で常識となっているブレース構造とラーメン構造の違いなど,大学の講義で出てきた記憶がない.しかし,私の携わっている分野では,機械と合わせて架台の設計をする必要があり,構造力学が必要になってくる.

建築の分野を独学で勉強する人だけでなく,私のようにメインで機械をやっていて,サブ的な要素として構造力学が必要になる者にとって,非常に有用な書籍だと感じた.

柱と梁の接合(ピン接合の具体例2)

前回に引き続きピン接合の具体例を挙げたい。

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これは川の水位を測定するための設備のようだ。柱と下段の梁との接合部は下図のようになっている。

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弱軸方向に関しては,H鋼柱に板を張らないといけないわけだ.

裏面は溶接できないということになるが,ガセットプレートを付けるよりか溶接長が長く取れるので良いのかもしれない.

柱と梁の接合(ピン接合の具体例)

前回の記事で述べた剛接合は定石として形状がほとんど決まっているが,ピン接合は状況によっていろいろな方法がある.

たとえば,部材が等辺山形鋼の場合には,次の図のような接合部の形状が考えられる.

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ピン接合の例

建築研究所監修『建築設備耐震設計・施工指針2005年版』より.