ぱぷりかの機械系技術ノート

なにかのお役に立てばうれしいです

機械基礎のグラウトについて(樹脂モルタルを使用する場合)

まず最初に私のグループが使用していた方法について述べる.

グラウトは下図のように施工していた.

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樹脂モルタルを使用する場合

グラウト材としては樹脂モルタル(エポキシボンドと珪砂を混ぜたもの)を使用した.

メリット

  • 硬化時間が短い(24時間程度)なので,養生期間が短くできる.
  • ミキサー等の器具が必要ない(大きめの桶のようなものでボンドと珪砂を混ぜればよい)

デメリット

  • 粘度が高く,ヘラなどですき間に充填するのであるが,そのための手間がかかる.
  • 確実に充填されているかどうかの確認ができない.

機械基礎のグラウトについて

機械にもいろいろな種類があるが,コンクリート基礎にアンカーボルト等で固定して使用するものがある. たとえば,比較的大きいディーゼル発電機,各種工作機械,粉砕機,送風機などが挙げられる.

コンクリート面を完全に水平にすることは一般的には不可能なので, あらかじめ機械とコンクリートとの間にすき間を設けておき, 機械の位置決めをしたあと,すき間にモルタルを充填する.

このやり方については,あまり最近の本で書かれていることはないように感じる. 私が経験したやり方や,古い本に載っていた方法をまとめてみようと思う.

Vベルトの長さの選定について(一般用Vベルト)

前回の内容に基づいて, Excelのシートを作成した.

本シートは一般用Vベルトのものである.細幅Vベルトのものは後日作成したい.

一般用Vベルト,長さ計算シート

Vベルトの長さの選定について

機械の新規製作や改造の際にVベルトの長さを決める必要が生じることがある. 今回はベルト長さ選定の省力化について考えてみたい。

(プーリーの形式や呼び径が既に決まっているとして)ベルトの長さを決めるときには, 以下の手順が一般的だろう。

  1. プーリーのピッチ径と芯間距離から理論的なベルト長さを求める
  2. 理論値に近く,規格にある長さのベルトを探す
  3. そのベルトを使用した場合の実際の芯間距離を求める
  4. その芯間距離で問題なければ上記ベルト長さを採用し,問題があれば, 別の長さのベルトを探す.

具体例

ベルト駆動の送風機のような例を考えてみよう(下図)。

  • 駆動側と従動側のプーリーが軸を水平にして配置されているとする。
  • それぞれの地面からの高さは異なるものとする(h1≠h2)。
  • 駆動側プーリーはスライドベース上に設置され水平方向に移動するものとする。
  • またプーリー径d1、d2は既知とする。

手順1

このような場合、通常、図面上で寸法が与えられるのはプーリーの高さh1およびh2と、 水平間の距離xである。これらの寸法から三平方の定理で芯間距離lを求める。

lがわかれば、公式やらアプリやらを使用してベルト長さが得られる。 ここまでが上記の手順1である。

実際のところ、h1、h2、xから(芯間距離を求めることなく)ベルト長さが計算できる アプリなどがあればよいのだが、以前私が探した時にはそのようなものは見つからなかった。

手順2

理論的なベルト長さがわかれば、それを基に規格品を選定する。 昔ながらのA形とかC形は1インチ刻みで長さがあるから選択肢が複数あることが多いが、 細幅Vベルト(3Vとか8V)は刻みが粗いので選択肢的には少ないかもしれない。(上記手順2)

手順3

手順3としては、公式から実際の芯間距離lを計算する。 実際にはh1、h2は固定であり、xがどうなるのかが重要となる。 再度三平方の定理でxを求め、問題ないか検討を行うことになる。

この手順においても、ベルト長さとh1、h2から直接xが計算できる アプリなどがあればよいのだが、以前私が探した時にはそのようなものは見つからず、 かゆいところに手が届かないという状況に感じる。

手順4

重要なのはモーターがスライドベースの中のどの位置に納まるかということである。 モーターがあまりにも負荷側から離れていた場合にはベルトの張り代がなくなるし、 負荷側に近い場合にはベルトが入らなくなる恐れがある。 モーターはスライドベースの中で中央より多少負荷側に入っているくらいが良い。

まとめ

というわけで、ベルト長さの選定にあたっては、上記の赤字の部分2か所に関して、 省力化の余地があると思う。

そのためのアプリやらExcelシートなりを作るのは簡単だが、 普段デスクに座っているような設計担当者ならいざ知らず、 現場の整備担当者はそこまで時間を割くことができないのも事実だと思う。

次回は上記の省力化を考慮したExcelシートについて書きたい。

歯車の製作

これまで私のグループでやってきたことで一番スリルがあった仕事はなにか, と聞かれたら,この記事である『歯車の製作』を挙げると思う.

粉粒体を乾燥させるロータリードライヤーというものがあるのだが, とあるお客様からこのドライヤーを駆動させている歯車が摩耗してしまい, 回転がスムーズでなくなってしまったという相談があった.

このドライヤーは他社で製作されたもので図面も一切ない状態だった. 現地を見てみると歯車のモジュールは18で 駆動側は歯数19で,従動側は歯数120くらいだ. (実際にはデータがないのでモジュールは外形と歯数から推定した)

駆動側は摩耗しては先が尖っている状態で,しかも, 何枚か歯が折れているという想像以上にひどい状態だった. それより驚いたのは従動側の歯車(直径2m以上)は鉄の輪っかに 歯が溶接されているだけのものだった. 圧力角もひったくれもないような感じだ.

本来なら駆動側も従動側も新しくしたいところだが, なんとか金をかけずにやりたいということで, 駆動側だけ新しくすることになった.

FCD600で駆動側の歯車を製作し,歯の部分は鋳放しにすることにした. 歯の形状は小原歯車工業(KHK)のホームページの無償プログラムでCADデータとした. KHK様には本当に感謝しています.

鋳物屋に頼んだところ粗材費用25万,納期2ヶ月くらいかかった (普通の鋳物屋だと費用はもっとかかると思われる) 万が一うまくいかなかったら,費用は無駄になるし, 納期もまたかかってしまうということでヒヤヒヤものだった.

こんなもんで大丈夫か?と思いつつ,機械加工が終わり,交換当日. 私としては,万が一に備えて,既存のものも使える状態で外したかったが, 現場の連中は構わず再利用不可能な形で解体... 朝から解体して,5時過ぎくらいに組み立てが終了. 歯にグリスを塗りたくって試運転したところ全く問題なく運転ができた.

従動側は全然歯切りしていないような代物で, 駆動側は図面のまったくないところから製作した鋳放しの歯車だが, なんとかなるものなんだなあと感じた.

それと同時にこんな危ない橋を渡るのはこれきりにしたいと思った.

『構造力学第2版<静定編><不静定編>』を読んで

だいぶ前になるが,﨑元達郎『構造力学第2版』(森北出版,1993年)を読んだ.静定編と不静定編の2編に分かれている. 静定編はとくにまあたらしいことは書いていなかったが,不静定編は類書にくらべて丁寧で,解法についての理解が深まった.

良かった点

  • ごく簡単な不静定問題であれば,コンピューターに頼らずに解くことができるようになる
  • 演習問題の解答が丁寧だった

残念だった点

  • 土木関係がメインなのだろうか.柱のある構造物の強度計算は少ない.そのせいか固定モーメント法などは記載がない.

感想

この本の内容が,私の普段向き合っているような(機械系の)設計課題にそのまま適用できることはかなり稀だと思う.

しかし,この本で得られた考え方は非常に役に立つと思うし,仮に不静定の問題に出くわしても怖気づくことなく対応できるようになったと思う.