ぱぷりかの機械系技術ノート

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歯車の製作

これまで私のグループでやってきたことで一番スリルがあった仕事はなにか, と聞かれたら,この記事である『歯車の製作』を挙げると思う.

粉粒体を乾燥させるロータリードライヤーというものがあるのだが, とあるお客様からこのドライヤーを駆動させている歯車が摩耗してしまい, 回転がスムーズでなくなってしまったという相談があった.

このドライヤーは他社で製作されたもので図面も一切ない状態だった. 現地を見てみると歯車のモジュールは18で 駆動側は歯数19で,従動側は歯数120くらいだ. (実際にはデータがないのでモジュールは外形と歯数から推定した)

駆動側は摩耗しては先が尖っている状態で,しかも, 何枚か歯が折れているという想像以上にひどい状態だった. それより驚いたのは従動側の歯車(直径2m以上)は鉄の輪っかに 歯が溶接されているだけのものだった. 圧力角もひったくれもないような感じだ.

本来なら駆動側も従動側も新しくしたいところだが, なんとか金をかけずにやりたいということで, 駆動側だけ新しくすることになった.

FCD600で駆動側の歯車を製作し,歯の部分は鋳放しにすることにした. 歯の形状は小原歯車工業(KHK)のホームページの無償プログラムでCADデータとした. KHK様には本当に感謝しています.

鋳物屋に頼んだところ粗材費用25万,納期2ヶ月くらいかかった (普通の鋳物屋だと費用はもっとかかると思われる) 万が一うまくいかなかったら,費用は無駄になるし, 納期もまたかかってしまうということでヒヤヒヤものだった.

こんなもんで大丈夫か?と思いつつ,機械加工が終わり,交換当日. 私としては,万が一に備えて,既存のものも使える状態で外したかったが, 現場の連中は構わず再利用不可能な形で解体... 朝から解体して,5時過ぎくらいに組み立てが終了. 歯にグリスを塗りたくって試運転したところ全く問題なく運転ができた.

従動側は全然歯切りしていないような代物で, 駆動側は図面のまったくないところから製作した鋳放しの歯車だが, なんとかなるものなんだなあと感じた.

それと同時にこんな危ない橋を渡るのはこれきりにしたいと思った.