ぱぷりかの機械系技術ノート

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Vベルトの長さの選定について

機械の新規製作や改造の際にVベルトの長さを決める必要が生じることがある. 今回はベルト長さ選定の省力化について考えてみたい。

(プーリーの形式や呼び径が既に決まっているとして)ベルトの長さを決めるときには, 以下の手順が一般的だろう。

  1. プーリーのピッチ径と芯間距離から理論的なベルト長さを求める
  2. 理論値に近く,規格にある長さのベルトを探す
  3. そのベルトを使用した場合の実際の芯間距離を求める
  4. その芯間距離で問題なければ上記ベルト長さを採用し,問題があれば, 別の長さのベルトを探す.

具体例

ベルト駆動の送風機のような例を考えてみよう(下図)。

  • 駆動側と従動側のプーリーが軸を水平にして配置されているとする。
  • それぞれの地面からの高さは異なるものとする(h1≠h2)。
  • 駆動側プーリーはスライドベース上に設置され水平方向に移動するものとする。
  • またプーリー径d1、d2は既知とする。

手順1

このような場合、通常、図面上で寸法が与えられるのはプーリーの高さh1およびh2と、 水平間の距離xである。これらの寸法から三平方の定理で芯間距離lを求める。

lがわかれば、公式やらアプリやらを使用してベルト長さが得られる。 ここまでが上記の手順1である。

実際のところ、h1、h2、xから(芯間距離を求めることなく)ベルト長さが計算できる アプリなどがあればよいのだが、以前私が探した時にはそのようなものは見つからなかった。

手順2

理論的なベルト長さがわかれば、それを基に規格品を選定する。 昔ながらのA形とかC形は1インチ刻みで長さがあるから選択肢が複数あることが多いが、 細幅Vベルト(3Vとか8V)は刻みが粗いので選択肢的には少ないかもしれない。(上記手順2)

手順3

手順3としては、公式から実際の芯間距離lを計算する。 実際にはh1、h2は固定であり、xがどうなるのかが重要となる。 再度三平方の定理でxを求め、問題ないか検討を行うことになる。

この手順においても、ベルト長さとh1、h2から直接xが計算できる アプリなどがあればよいのだが、以前私が探した時にはそのようなものは見つからず、 かゆいところに手が届かないという状況に感じる。

手順4

重要なのはモーターがスライドベースの中のどの位置に納まるかということである。 モーターがあまりにも負荷側から離れていた場合にはベルトの張り代がなくなるし、 負荷側に近い場合にはベルトが入らなくなる恐れがある。 モーターはスライドベースの中で中央より多少負荷側に入っているくらいが良い。

まとめ

というわけで、ベルト長さの選定にあたっては、上記の赤字の部分2か所に関して、 省力化の余地があると思う。

そのためのアプリやらExcelシートなりを作るのは簡単だが、 普段デスクに座っているような設計担当者ならいざ知らず、 現場の整備担当者はそこまで時間を割くことができないのも事実だと思う。

次回は上記の省力化を考慮したExcelシートについて書きたい。