『ねじ設計法と保全対策』を読んで
橋村真治著『ねじ設計法と保全対策』(日刊工業新聞社,2014年)を読んだ.
良い点
全体を通して読みやすいと感じた.
よくあるねじの本だとまず斜面の原理からはじまって,冒頭から読者が置いてきぼりになる感があるが,この本は細かい理屈を抜きにして話が進んでいくので,立ち止まることなく読み進めることができた.
また,各セクションが細かく,2ページから4ページくらいにまとめられていて,そのセクションごとに難易度が3段階で記されているので,読み始める前の心の準備ができた.章立てもシンプルでわかりやすかった.
塑性域締付けの場合の締付け線図が詳しく説明されていたのは個人的に役に立った.(私の持っている他の本ではあまり解説されていなかったため)
残念だった点
実例が乏しいと感じた.たとえば,軸直角方向の疲労強度が不足した場合の具体的な対策が示されていればより役に立つと思った.
感想
ダブルナットの締め方について,上ナット正転法と下ナット逆転法がの2種類があり,本書や他の類書によると,下ナット逆転法が推奨されている.しかし,私のグループではつねに上ナット正転法を使用している.作業員的には下ナットを逆転させると締め付けたものをゆるめることになるので,心理的にやりたくないためと思われる.下ナットを逆転させようとしたときにボルト(おねじ側)や上ナットが同時に回ってしまうということもあり得る.なかなか現実的に下ナット逆転法を使用するのは簡単ではないと思う.
また,ばね座金については有効性を十分に検討する必要があるとの記載があった.個人的にはばね座金というのは飾りだと思う.ばね座金があろうがなかろうがゆるむときにはゆるむ.逆にばね座金が有効なときというのがあれば知りたい.